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交通事故で負った後遺障害と後遺症の違いとは?もらえる慰謝料や申請についても解説 (2025.06.09)
交通事故の後遺症と後遺障害は、名称が似ているため混同されがちです。
後遺症は治療後も残る症状全般を指しますが、後遺障害は交通事故による労働能力の損失として、法律で厳密に定められています。
本記事では、賠償金請求に大きく関わる両者の違いと認定手続きについて解説します。
そもそも後遺症とは何か
遺症とは、事故や病気で体を傷めた後に治療を受けても完全に治りきらず、今後の回復が望めない体の状態のことです。
後遺症は一度発生すると完治が難しく、長期的な対応が必要になります。
具体例としては、脳梗塞の治療後に手足の動きが不自由になる症状が残るケースなどです。
そもそも後遺障害とは何か
後遺障害は、交通事故で体を傷めた後の治療を終えても、これ以上の回復が見込めない状態となり、働けなくなってしまうことです。
後遺障害は自動車損害賠償保障法施行令で定められており、労働能力の損失を伴う深刻な症状として扱われます。
具体例としては、事故によって両腕の機能が失われ仕事ができなくなった状態などがあります。
後遺症と後遺障害は何が違うのか
後遺症と後遺障害は、混同されがちですが明確な違いがあります。
後遺症は、治療を続けても改善が見込めない体の症状を指し、医療機関での治療後も残る痛みや不自由さなどのことです。
一方で後遺障害は、より厳密な基準があります。
治療を継続しても回復の見込みがない症状固定の状態で、働く能力が失われている状態であり、自動車損害賠償保障法施行令の基準に該当すると認定されなければいけません。
後遺障害は、自賠責損害調査事務所による詳しい調査が実施され、自賠責保険会社が症状の程度を判断します。
後遺障害は、認定された等級に応じて、失った収入や精神的な苦痛に対する補償が設けられています。
賠償金請求には後遺障害の認定が不可欠
交通事故による後遺症に対する賠償金は、後遺障害の認定を受けているかどうかで大きく異なる点に注意が必要です。
後遺障害として認定されると、等級に応じた後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
通常の後遺症だけでは、これらの賠償金を請求することはできません。
事故の影響で体や心に不調が残っている場合でも、後遺障害の認定がなければ、十分な補償を受けることは難しい状況です。
そのため、交通事故で後遺症が残った場合には、速やかに後遺障害等級の認定手続きを進めることが重要です。
適切な補償を受けるためにも、症状を放置せずに必要な対応を取ることをおすすめします。
後遺障害認定で請求できる賠償金の内容
後遺障害の認定を受けると、2種類の賠償金を請求することができます。
それが「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」です。
後遺障害慰謝料について
後遺障害慰謝料は、事故により後遺障害が残った被害者の精神的な苦痛を補償するための賠償金です。
この慰謝料は、認定された後遺障害の等級に応じて金額が設定されています。
賠償金額の基準には主に以下の2種類があります。
基準の種類 |
特徴 |
裁判所の基準 |
裁判例を参考に算定される金額 |
自賠責の基準 |
自動車損害賠償保障法に基づく金額 |
後遺障害逸失利益について
後遺障害逸失利益は、事故で後遺障害が残り、働く能力が低下したことで失われる将来の収入を補償する制度です。
この賠償金は、67歳までの就労期間における減収分をまとめて請求することが可能です。
賠償金の計算には、後遺障害の等級ごとに定められた労働能力喪失率が使用されます。
認定される後遺障害の等級が重いほど労働能力喪失率も上がり、基準となる収入や年齢を考慮して将来の収入の損失が算定されます。
後遺障害の認定には申請手続きが不可欠
後遺障害の等級認定を取得するためには、保険会社に対して正式な申請手続きが必要です。
申請手続きの方法には主に「事前申請」と「被害者請求」があります。
事前申告による申請手続き
事前申告は、交通事故の被害者に代わって、加害者側の保険会社が自賠責保険の事務所へ申請を行う制度です。
被害者自身の手続き負担を大幅に軽減できるため、迅速な対応を希望する方に適しています。
ただし、保険会社は必要最低限の手続きを実施するため、より有利な等級認定を目指した詳細な資料作成などは期待できません。
基本的な申請手続きを代行してもらえますが、被害者にとって有利な等級判定を目指したサポートは望めない点に注意が必要です。
被害者請求による手続き
被害者請求は、事故の被害者本人が自賠責保険の事務所に直接申請を行う方法です。
より高い等級認定を目指して、被害状況を詳細に説明する資料を作成できるのが大きなメリットとなります。
納得のいく書類を準備することで、有利な認定を得られる可能性が高まります。
しかし、後遺障害等級の判定は書類審査のみで行われるため、専門知識が不足している場合は適切な資料作成が困難です。
そのため、十分な立証ができず予想より低い等級認定となるリスクがあります。
まとめ
後遺症は治療後も残る症状全般を指しますが、後遺障害は交通事故により労働能力が失われ、法律で定められた基準に基づいて認定される必要があります。
認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益の賠償金の請求が可能です。
適切な補償を受けるためには、早期に弁護士へ相談し、専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。